【美味倶楽部。】
カテゴリー: 美味倶楽部夜話。
疾く過ぎゆくな 少年の春
@ナナ猫
昨日は暖かく晴れ渡り、桜も見ごろの絶好のお花見日和でした。
そのせいか桜のあるところはすでに大勢のお花見客でいっぱい。
桜を求めて彷徨ううちに、ありました。
見事に咲き誇る、立派な枝振りの満開の桜。
しかも誰もいないなんて、なんという幸運。
小さいけれど立派な神社の境内へと続く門の石柱を包むように広がった枝は手を伸ばせば届くほど。
折りしも、真向かいの音楽教室ではちょうどレッスンの時間だったようで、一音一音確かめながら弾いているたどたどしいピアノの音がかえって興を誘い、この世ならぬ美しい世界へ誘われるようでした。
以前はあまり好きではなかった春がだんだんと好きになり、今年は愛おしいまでになるとは、
こころ一つでこんなにも景色は違って見えるものなのですね。
桜という樹は不思議なものだと思います。
人々の希望と喜びを一身に浴びて生まれ出で、花を咲かせ、散っていく...
短い生の、終焉に向かってこその優美さは人の一生にも似て儚くも美しい歓びの樹。
古くから桜を愛することを知る日本人は、やはり優れて繊細な感覚を持っていると思います。
疾く過ぎゆくは春の日。
『花に嵐の譬えもあるぞ さよならだけが人生だ』(井伏鱒二)
『さよならだけが人生ならば 人生なんていりません』(寺山修司)
『花を踏んでは同じく惜しむ少年の春』(白居易)
帰り道、去年の春から見つけていた桜のトンネルを通って帰りました。
今を盛りと咲くこの花も明日には散っていくのでしょう。
そうと知りつつも、いってしまうなと願うのが人情。
疾く過ぎゆくな、少年の春。
悔いなく人生を生きたいものです。
雲の話
@ナナ猫
ひとりぼっちの猫の、たったひとりのお友達はお空の白い雲でした。
あんまり仲良くなりすぎて、猫は自分が猫だということを忘れてしまいました。
ある日、猫を哀れに思った神様が、猫の前に梯子をかけてやりました。
猫は大喜び。
梯子を登ってお友達の雲の上に飛び乗りました。
猫は自分が猫だということを思い出し、深々と神様におじぎをすると、大好きな雲の上にごろりと寝転んで、気持ちよく眠りました。
雲の上でも、猫はやっぱり猫なのでした。
空を見上げるのが習慣になったのは、やはりこちらに越してきてからです。
夜空の星の美しさはさることながら、昼間の空にもたくさんの物語があるようで、見上げていると時の経つのを忘れます。
恋猫
@ナナ猫
パリの美術館の裏に住む深海色の毛並みの猫が恋をした。
相手は魚、しかも美術館の絵の中に棲んでいる。
猫にとって魚は特別な日に食べる大好物。まさか食べ物に恋をするなど誰も思いもしなかった。
けれどその魚は普通の魚とは違う特別なオーラを放ち、猫の心を一瞬で捉えてしまった。
その魚は金色の宝石のように輝く静かな美しい魚。
暗い海の底で孤高の光を放っている。
猫は魚のことばかり考えた。
寝ることも食事をすることも忘れ、魚のことばかり想った。
猫はとうとう病気のようにやせ細ってしまった。
見かねた館長は若い絵描きに金の魚の棲む絵をそっくりそのまま模写してほしいと頼みに行った。
ただし、金の魚は別のキャンバスに描くようにと注文した。
絵が出来上がると、館長は本物の絵と、金の魚がいない暗い海の底の絵とをかけかえた。
そして魚だけが描かれたキャンバスに、丁寧に鋏を入れて魚を切り抜くと、ピンクのベルベットのリボンに縫い付けた。
すべての準備が調うと、館長は猫を抱き上げ美術館の中に連れて入った。
金の魚が棲んでいたはずの、空っぽになった海の底の絵を見て、猫は静かにはらはらと泣いた。
あの美しかった金の魚は自分の棲む海を捨て、猫の前から消えてしまった…。
すると館長はポケットからピンクのリボンのついた例の魚を取り出して、猫の首にかけてやった。
目の前から消えてしまったと思った魚が、今この瞬間、滑らかなピンクのベルベットのリボンによって猫と結ばれたのだ。
館長は猫を美術館の裏に戻すと、猫の頭を優しく一撫でして帰っていった。
それから、美術館の裏で、ピンクのリボンで首に金色の魚をかけた猫の姿を見るようになったが、やがて猫はいなくなった。
一生の伴侶を得た猫は、金の魚に世界のあらゆる美しいものを見せてやろうと、魚を連れて旅をすることに決めたのだった。
・*:.。.・*:.。. ・*:.。. ・*:.。. ・*:.。. ・*:.。.・*:.。. ・*:.。.
大好きな画家、パウル・クレーの絵を眺めていると、
なんだか一匹の猫になってしまったような気がしてきます。
魚のモチーフを使った作品が多いからでしょうか。
この作品はパウル・クレーの有名な『金色の魚』。
他に、『魚の魔術』なども大好きな絵のひとつです。
疾く過ぎゆくな 少年の春
昨日は暖かく晴れ渡り、桜も見ごろの絶好のお花見日和でした。
そのせいか桜のあるところはすでに大勢のお花見客でいっぱい。
桜を求めて彷徨ううちに、ありました。
見事に咲き誇る、立派な枝振りの満開の桜。
しかも誰もいないなんて、なんという幸運。
小さいけれど立派な神社の境内へと続く門の石柱を包むように広がった枝は手を伸ばせば届くほど。
折りしも、真向かいの音楽教室ではちょうどレッスンの時間だったようで、一音一音確かめながら弾いているたどたどしいピアノの音がかえって興を誘い、この世ならぬ美しい世界へ誘われるようでした。
以前はあまり好きではなかった春がだんだんと好きになり、今年は愛おしいまでになるとは、
こころ一つでこんなにも景色は違って見えるものなのですね。
桜という樹は不思議なものだと思います。
人々の希望と喜びを一身に浴びて生まれ出で、花を咲かせ、散っていく...
短い生の、終焉に向かってこその優美さは人の一生にも似て儚くも美しい歓びの樹。
古くから桜を愛することを知る日本人は、やはり優れて繊細な感覚を持っていると思います。
疾く過ぎゆくは春の日。
『花に嵐の譬えもあるぞ さよならだけが人生だ』(井伏鱒二)
『さよならだけが人生ならば 人生なんていりません』(寺山修司)
『花を踏んでは同じく惜しむ少年の春』(白居易)
帰り道、去年の春から見つけていた桜のトンネルを通って帰りました。
今を盛りと咲くこの花も明日には散っていくのでしょう。
そうと知りつつも、いってしまうなと願うのが人情。
疾く過ぎゆくな、少年の春。
悔いなく人生を生きたいものです。
→more
雲の話
ひとりぼっちの猫の、たったひとりのお友達はお空の白い雲でした。
あんまり仲良くなりすぎて、猫は自分が猫だということを忘れてしまいました。
ある日、猫を哀れに思った神様が、猫の前に梯子をかけてやりました。
猫は大喜び。
梯子を登ってお友達の雲の上に飛び乗りました。
猫は自分が猫だということを思い出し、深々と神様におじぎをすると、大好きな雲の上にごろりと寝転んで、気持ちよく眠りました。
雲の上でも、猫はやっぱり猫なのでした。
空を見上げるのが習慣になったのは、やはりこちらに越してきてからです。
夜空の星の美しさはさることながら、昼間の空にもたくさんの物語があるようで、見上げていると時の経つのを忘れます。
→more
恋猫
パリの美術館の裏に住む深海色の毛並みの猫が恋をした。
相手は魚、しかも美術館の絵の中に棲んでいる。
猫にとって魚は特別な日に食べる大好物。まさか食べ物に恋をするなど誰も思いもしなかった。
けれどその魚は普通の魚とは違う特別なオーラを放ち、猫の心を一瞬で捉えてしまった。
その魚は金色の宝石のように輝く静かな美しい魚。
暗い海の底で孤高の光を放っている。
猫は魚のことばかり考えた。
寝ることも食事をすることも忘れ、魚のことばかり想った。
猫はとうとう病気のようにやせ細ってしまった。
見かねた館長は若い絵描きに金の魚の棲む絵をそっくりそのまま模写してほしいと頼みに行った。
ただし、金の魚は別のキャンバスに描くようにと注文した。
絵が出来上がると、館長は本物の絵と、金の魚がいない暗い海の底の絵とをかけかえた。
そして魚だけが描かれたキャンバスに、丁寧に鋏を入れて魚を切り抜くと、ピンクのベルベットのリボンに縫い付けた。
すべての準備が調うと、館長は猫を抱き上げ美術館の中に連れて入った。
金の魚が棲んでいたはずの、空っぽになった海の底の絵を見て、猫は静かにはらはらと泣いた。
あの美しかった金の魚は自分の棲む海を捨て、猫の前から消えてしまった…。
すると館長はポケットからピンクのリボンのついた例の魚を取り出して、猫の首にかけてやった。
目の前から消えてしまったと思った魚が、今この瞬間、滑らかなピンクのベルベットのリボンによって猫と結ばれたのだ。
館長は猫を美術館の裏に戻すと、猫の頭を優しく一撫でして帰っていった。
それから、美術館の裏で、ピンクのリボンで首に金色の魚をかけた猫の姿を見るようになったが、やがて猫はいなくなった。
一生の伴侶を得た猫は、金の魚に世界のあらゆる美しいものを見せてやろうと、魚を連れて旅をすることに決めたのだった。
・*:.。.・*:.。. ・*:.。. ・*:.。. ・*:.。. ・*:.。.・*:.。. ・*:.。.
大好きな画家、パウル・クレーの絵を眺めていると、
なんだか一匹の猫になってしまったような気がしてきます。
魚のモチーフを使った作品が多いからでしょうか。
この作品はパウル・クレーの有名な『金色の魚』。
他に、『魚の魔術』なども大好きな絵のひとつです。
→more
そのほかのカテゴリー
まかない★(68)
カクテル★(29)
おつまみ★(26)
スイーツ★(22)
食あれこれ。(10)
日々あれこれ。(11)
いただきもの。(3)
美味倶楽部夜話。(3)
美味しいシネマ★(2)
美味しい本★(1)
美味しいコーヒー★(2)
★プロフィール★(1)